2012年4月10日火曜日

円は円に変換し特定の直線は無限遠に移動させる変換


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大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式


【解説】
双曲線を円に変換するのと同様にして、
円を円に変換し特定の直線は無限遠に移動させる変換を考える。
そして、その変換を利用して、下図で示す、
「点A(極)に対する極線PQ上の点Bを極にした極線RSは、点Aを通る。」
という定理を証明する。

(証明開始)
上の図の円は円のままに変換し、
直線 X=2 は、無限遠に移動させる変換を考える。
この円の式を以下のように、直線の式(X-2)=0の左辺を分母にする式に変形する。
 上の式のように、あるパラメータkとaを用いて式を変形し、
次に、その式の変形が恒等式になるようにパラメータkとaを定める。
 上の計算により、
パラメータ a=-1/2に定まり、
 パラメータ k=2/3に定まった。
このパラメータを代入して、式の変形を続ける。
上の計算で得られたX’とY’とに変換する場合は、
半径1の円は同じ半径1の円に変換される。
一方、
直線 X=2
の上の全ての点は、無限遠に移動させられる。
それ以外の直線は、以下の計算でわかるように、直線は、折り曲げられずに、直線に変換される。

その計算をする準備として、座標XおよびYを、X’とY’であらわす以下の式を計算する。
先ず、座標Xは以下のように計算する。
次に、座標Yは、以下のように計算する。
この座標XとYであらわした直線は、以下のように計算すると、 座標X’とY’でも、直線になる。
 上の結果が示すように座標X’と座標Y’でも直線になる。
すなわち、最初に示した円と直線とであらわされた図形は、以下の図形に変換される。
この図形で成り立つ円と直線の関係は、最初の図形でも成り立つ。
この図形では、直線mと直線nが無限遠点A’で交わる。
(「平行線は無限遠点で交差する」という、射影幾何学の公理系に従う)

すなわち、無限遠点A’を通り円に接する接線mとnは互いに平行な線である。

次に、直線R’S’も無限遠点A’を通ることを証明するために、
直線R’S’が接線m及びnと平行であることを証明する。
接線mと円との接点をP’とし、
接線nと円との接点をQ’とする。
その点P’とQ’とを結んだ直線は、円の中心点Oを通り、直線m及び直線nに垂直な直線である。
直線P’Q’上の点B’から円に2本の接線を引き、それぞれの接線と円との接点をR’とS’とする。
そうすると、
直角三角形△B’OR’と△B’OS’とでは、
斜辺B’Oが 共通であり、
1辺OR’=OS’であるので、
△B’OR’≡△B’OS’
∴ ∠B’OR’=∠B’OS’
つまり、直線P’Q’=直線OTは、
二等辺三角形△OR’S’の頂角∠Oを二等分する。
また、△OR’S’の
∠R’=∠S’
であり、
∠R’+∠S’+∠O=π
であるので、
△OR’Tの
∠T=π-∠R’-(∠O/2)
=π-∠R’-(π-2∠R’)/2
=π/2
∴直線OT=直線P’Q’は直線R’S’に垂直である。
 そのため直線R’S’は直線m及び直線nに平行である。

そのため、直線R’S’は直線m及び直線nと無限遠点A’で交わる。
(ここで、「平行な直線の束は同じ無限遠点1つで交わる」という射影幾何学の公理系に従って考えた)

無限遠点A’は、最初の円の図形の点Aを移動した位置である。
よって、
最初の図形においても、
直線RSは、点Aを通る。
(証明おわり)

(補足)

なお、射影幾何学は、通常の点(X,Y)をあらわす射影座標(kX,kY,k)と、
無限遠点をあらわす射影座標(α,β,0)とを用いて、

それらの点の間の変換を研究する幾何学です。
射影幾何学では、上の計算で、方程式の分母に置いた式は射影座標の3番目の座標に置いて計算します。

そうすると、上の座標変換の式が以下の行列であらわせます。
詳しくは射影幾何学の専門書を参照してください。

射影幾何学と数学者の夢について良い記事のブログがあったので紹介します。
「算数オリンピックの長尾賞」(小島寛之先生)
 若き天才数学者の人生と、「その若者に射影幾何学を教えた回顧」の話が感動的です。 
癌に侵された死の宣告を受けつつ数学の世界に慰めを見出して充実した生を全うし31歳で亡くなった数学者の物語です。



リンク:
極と極線の関係の定理の証明
放物線における極と極線の関係
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次

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