2012年5月25日金曜日

行列の交換子の2乗は単位行列に比例



大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】 
行列Awuukと行列Bwuukとは等しくない場合が多いですが、
行列Aの行列式が0では無い場合は、
-1km(Amuus)=Bks=(Bkmmu)A-1us
が成り立ちます。
このようにある行列CとDが、
行列式が0では無い行列Pを介して、
PC=DP
という関係がある場合は、
行列CとDとは同じ固有値を持ち、行列Pによって互いに変換されます。
PCP-1=D
-1DP=C
そのため、 行列Awuukと行列Bwuukとは同じ固有値を持ち、行列A-1kmによって互いに変換されます。

また 、行列Awuukと行列Bwuukは同じ固有値を持つので、固有値の和をあらわす行列の対角成分の和も同じになります。
つまり、
tr(AB)=tr(BA)
です。
この関係は、アインシュタインの縮約記法であらわすと簡単に証明できます。
tr(AB)=muumummutr(BA)
です。

更に、行列AやBの行列式が0になる場合でも、
以下のようにして、
行列AB≡Fと、BA≡Gの固有値が等しいといえます。
行列Fの固有値λを求める式は、
det(F-λE)=0
(F11-λ) (F22-λ)-2112=0
λ-tr(F)λ+det(F)=0
ここで、
tr(F)=tr(AB)=tr(BA)=tr(G)
det(F)=det(AB)=det(A)det(B)=det(BA)=det(G)
λ-tr(G)λ+det(G)=0
だから、行列FとGは、固有値を求める式が同じになるから固有値が同じです。

この関係があるため、
交換子(AB-BA)≡C対角成分の和は0になります。
tr(AB-BA)=tr(AB)-tr(BA)=0
tr(C)=0
このため、2行2列の行列の交換子(AB-BA)≡Cの場合は、
2行2列の行列のケイリー・ハミルトンの定理によって、 
wuuk+det(C)wk=tr(C)wk
の関係に、 tr(C)=0を代入すると、
wuuk+det(C)wkwk
wuuk=-det(C)wk
すなわち、 行列の交換子(AB-BA)≡Cを2乗した行列は単位行列に比例し、詳しくは-det(C)倍になります。

【問題】
2行2列の行列AとBが
AB-BA=A
をみたすとき、
wuuk=Owk
が成立することを示せ。

「入試数学伝説の良門100」 
の問題96の、308ページ「別解」

(解答はじめ)
tr(A)=tr(AB-BA)=tr(AB)-tr(BA)=0 (1)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理によって、
wuuk+det(A)Ewk=tr(A)Awk
(1)を代入する。
wuuk=-det(A)Ewk (2)
A(AB-BA)=A(A)
(AB-BA)A=(A)A
(AB-ABA)+(ABA-BA)=2A
B-BA=2A
(2)を代入する。
-det(A)B+det(A)B=2A
-det(A)(B-B)=2A
wk=2Awuuk
∴ Awuuk=Owk
(解答おわり)

(別解:地道に計算する方法)
行列の要素を添え字を付けてあらわすと、式がスラスラかける。


(解答はじめ)
(AB-BA)wk=Awk
wuuk-Bwuuk=Awk 

111111122111111221
1112211221  (1)
222112222221122222
2221122112  (2)
121112122211121222 (3)
212111222121112221 (4)
(1)と(2)より、
1112211221-A22  (5)
(5)を(3)に代入して22を消去する。
12111212221112+B1211 (6)
12(1-B2211)=2A1112  (7)
(5)を(4)に代入して22を消去する。
212111112121112221 (8)
21(1-1122)=2A1121 (9)
(7)×21+(9)×12
21122A11(A2112-A1221) (10)
(10)に(5)を代入する
2112-2A1111
2112-A1111  (11)

次に、Awuukの要素を順次に計算する。
1uu111111221
(11)を代入して
1uu1=0  (12)

2uu221122222
(11)と(5)を代入して
 2uu2=0  (13)

1uu211121222121122
(5)を代入して
1uu2=0  (14)

2uu121112221211122) 
(5)を代入して
2uu1=0  (15)

∴ (12)(13)(14)(15)から
wuukwk
(解答おわり)




リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次