2012年1月31日火曜日

余因子行列とケイリー・ハミルトンの定理

 

大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式


(単位行列について)
単位行列Empは、
m≠pのとき、Emp=0,
m=pのとき、Emm=1である。


(0行列について)
0行列0mpは、
mとpがどの場合も、0mp=0

【余因子行列】
 余因子行列は、逆行列を導く基礎の行列で重要な行列ですが、高校生には教えられていません。高校生向けの一部の参考書に「余因子行列」の名前が登場するのみです。
 余因子行列の持つ数学的意味は大きく、そのため、余因子行列の全てを学ぶには、かなりの時間を必要とします。教育時間にゆとりを持てない「ゆとり教育」の下では、それを教えるゆとりが無いようです。
 そのため、高校生に余因子行列を教えるのはタブーになっているようなので、高校生の間は、以下の余因子行列の性質を知っても、その知識を隠して生活して下さい。自分自身が行列の性質を理解する助けにするためだけに用いるようにしてください。

(1)2行2列の行列の余因子行列
2行2列の行列Ampに対する行列式Δは、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
Δ=εmpm1p2
で計算しましたが、
その行列Ampに対する余因子行列Bstは、
その積の要素の1つを空欄にした以下の式で定義します。
1m=εmpp2  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。
2p=εmpm1  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
この計算に利用する行列
εmp
は、m≠pの場合では、
ε12=1,
ε21=-1
であり、
それ以外の、
m=pとなるεmpは、
ε11=ε22=0
です。
ここで、
余因子行列B=(余因子の行列Q)
Qの左上の添え字tは「転置行列」=行と列を入れ替えた行列、をあらわす記号です。
stst=Qts
1m1m 
=Qm1=εmpp2  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。
2p2p 
=Qp2=εmpm1  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
余因子の行列Qのm行目1列目の要素(余因子)のQm1は、行列式Δを計算する式のAm1を空欄にした形のεmpp2という式で定義されます。
このQm1は、Am1を含む行列式Δと、行列εmpによって以下のように関係付けられています。
つまり、行列εmpは、行列式Δの計算において、Am1が掛かって成る項Am1p2に関して、それに1を掛け算して加え合わせるか、(-1)を掛け算することで引き算するか、あるいは、それに0を掛け算することでその項は無くすか、の計算の制御を行なっています。
m1は、その計算の制御を行なう行列εmpを持っているので、
m1にも、そのAm1に関するAm1p2の項に対応して、行列式Δと同じ計算の制御によってAp2の項が加えられます。


ちなみに、行列式Δは、Δ=εmpm1p2
で計算するので、
Δ=(εmpm1)Ap2=Qp2p2
が成り立ち、かつ、
Δ=(εmpp2)Am1=Qm1m1
が成り立ちます。
 この式が意味することは、
(a)行列式Δを構成するどの項も、いずれかのp(p=1又は2)のAp2が掛かっています。
(b)行列式Δを構成するどの項も、いずれかのm(m=1又は2)のAm1が掛かっています。
(c)そして、 
k1=εkp1・Ap2+εmpm1・Ap2
ですので、
k1は、Ak1を1にし、m≠kであるAm1を0にして、Ak1が掛かる項のみを計算した行列式でもあります。
 そのため、余因子の行列Qtsは、行列式Δを構成する多数の項から、Atsに掛かる係数を集めて(2行2列の行列の場合は係数は1つしかありませんが)それを要素Qtsとした行列です。
 つまり、
行列式はΔ=εmpm1p2≡Σmpmpm1p2)
=ε121122+ε212112
=A1122-A2112です。
この行列式の計算式では、アインシュタインの縮約記法によって、εmpのmは、あらゆる値のm(及びあらゆる値のp)で式の和をとります。
一方、余因子の式のQm1=εmpp2のεmpのmは、Qm1のmに対応する1つのmに限定されていて、
εmpのpのみがあらゆる値の場合について式の和をとります。
例えば、余因子の1つのQ11=ε1pp2≡Σ1pp2
=(ε1112+ε1222)=A22です。
この値A22は、行列式の和を構成する項のうち、A11が掛かった項、すなわち、項A1122のA11に掛かる値です。
他のQtsも、同様に、行列式Δの和を構成する項のうち、Atsが掛かった項における、Atsに掛かる値です。

この余因子の行列Qにおける列ベクトルQt1=εtpp2は、列ベクトルAp2に垂直なベクトルです。

余因子の行列の要素Qt1は、行列Aの行列式のうち、At1に掛かる係数です。 
そして、この余因子の行列Qには、その列ベクトルと、行列Aの列ベクトルの内積を計算すると、
行の番号同士が一致すれば、内積の結果がΔになり、行の番号が一致しなければ、内積が0になるという大切な性質があります。
t1・Qt1=At1・εtpp2=εtpt1p2=Δ
t2・Qt1=At2・εtpp2=εtpt2p2=0
t1・Qt2=At1・εptp1=εptp1t1=0
t2・Qt2=At2・εptp1=εptp1t2=Δ
 この各ベクトル同士の内積の結果を行列の形にまとめると、
すなわち、行列Aのm列目の列ベクトルと、行列Qのp列目の列ベクトルとの内積の結果を、m行p列の行列にまとめてあらわすと、以下の式になる。
tm・Qtp=Δ・Emp 
この関係がある理由は、
t1は、行列Aの行列式の各項から、At1に掛かる係数を抽出した結果だからです。
その各係数Qt1に各At1を掛け合わせて、全てのtの場合についての和を取れば行列式の値そのものを計算する式に戻ります。
 また、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせれば、それは、行列式の計算において、At1の列ベクトルの位置にAt2の列ベクトルを置いて行列式を計算することに等しくなります。
行列式の計算では、2つの列ベクトルが等しければ、その行列式は0になります。
そのため、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせるということを行なうと、t2の列ベクトルが2行ある行列の行列式を計算することに等しくなり、その計算結果は、
t2・Qt1=0
になります。
(このため、余因子の行列の列ベクトルQt1は、元の行列の余りのベクトルAt2に垂直なベクトルです)


このように作られた列ベクトルで構成される行列tsを、行列の掛け算の計算規則の中で便利に使えるように、その行と列を入れ替えて定義したのが余因子行列stです。
行列の掛け算の計算規則では、ベクトルの内積は行ベクトルと列ベクトルの積であらわされるから列を行と入れ替えたのです。

余因子行列Bstは、余因子の行列tsの行と列を入れ替えた行列で、
11=A22
12=-A12
21=-A21
22=A11
です。


こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpm1p2=Δ
1mm2=εmpm2p2=0
上の計算は2つの列ベクトルが同じ行列の行列式を計算することになるので、値が0になる。
2pp1=εmpm1p1=0
2pp2=εmpm1p2=Δ

sttp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。

(2)3行3列の行列の余因子行列
3行3列の行列Ampに対する行列式Δは、
エディントンの行列式の計算記号εmpsを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
Δ=εmpsm1p2s3
で計算しましたが、
その行列Ampに対する余因子行列Bstは、
その積の要素の1つを空欄にした以下の式で定義します。
1m=εmpsp2s3  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。B2p=εmpsm1s3  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
3s=εmpsm1p2  ・・・行列式ΔのAs3を空欄にした。
この計算に利用する行列(正しくはテンソルと言う)
εmpr
は、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=-1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。


こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
3行3列の行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpsm1p2s3=Δ
1mm2=εmpsm2p2s3=0
・・・
結局、
smmp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。


(3)
このように、余因子行列Bsmは、行列Ampと掛け算することで、Δ・Esp
となる行列です。
smmp=Δ・sp

【余因子行列の可換性】
また、余因子行列Bsmは、
pssm=Δ・Epm
となる行列でもあります。
(証明開始)
余因子の行列Qmsにおいて、行列Atsのs列目の列ベクトルと行列Qmsのp列目の列ベクトルとの内積について、
ts・Qtp=Δ・Esp
が成り立ちましたが、それは行列式の計算に帰着したためでした。
 一方、行列式は、行と列を入れ替えても同じ結果になりますので、
行ベクトル同士の内積も行列式の計算に帰着し、
行列Aのm行目の行ベクトルAmtと行列Qのp行目の行ベクトルQptとの内積について、以下の式が成り立ちます。
mt・Qpt=Δ・Emp
 この関係によって、以下の式が成り立ちます。
mttp=Δ・Emp
 (証明おわり)

【余因子行列の注意点】
余因子行列は、大学生も間違え易い、以下の問題点がありますので、ここで注意点を指摘しておきます。
余因子行列B=(余因子の行列Q)
Qの左上の添え字tは「転置行列」=行と列を入れ替えた行列、をあらわす記号です。
stst=Qts
1m=Qm1=εmpsp2s3
2p=Qp2=εmpsm1s3
3s=Qs3=εmpsm1p2



余因子tsは、もとの行列式よりも1つ次元の低い行列式で計算されています

【3次元ベクトルの外積】
この余因子の行列Qにおける列ベクトルQm1=εmpsp2s3は、列ベクトルAp2と列ベクトルAs3との張る平面に垂直なベクトルです。この列ベクトルQm1は、列ベクトルAp2と列ベクトルAs3との外積と呼ばれています。そしてその2つのベクトルが作る平行四辺形の面積の値の長さを持ちます。
(ベクトルの外積の応用:三角錐の底面を構成する2つのベクトルの外積をベクトルQとします。そのベクトルQの長さを1にした単位ベクトルと三角錐の頂点の位置のベクトルGとの内積は、その三角錐の頂点の底面に対する高さです)

 そして、この余因子の行列Qには、その列ベクトルと、行列Aの列ベクトルの内積を計算すると、
行の番号同士が一致すれば、内積の結果がΔになり、行の番号が一致しなければ、内積が0になるという大切な性質があります。
t1・Qt1=At1・εtpsp2s3=εtpst1p2s3=Δ
t2・Qt1=At2・εtpsp2s3=εtpst2p2s3=0
t3・Qt1=At3・εtpsp2s3=εtpst3p2s3=0

すなわち、この各ベクトル同士の内積の結果を行列の形にまとめると、
tp・Qtm=ΔEpm
という関係があります。

行ベクトル同士の内積でも同じ関係があります。
pt・Qmt=ΔEpm


(At1・Qt1=Δという関係がある理由)
t1は、行列Aの行列式の各項から、At1に掛かる係数を集めて、その係数の和を求めた結果だからです。
その各係数Qt1毎に各At1を掛け合わせて、全てのtの場合についての和を取れば行列式の値そのものを計算する式に戻ります。

(At2・Qt1=0という関係がある理由)
 また、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせれば、それは、行列式の計算において、At1の列ベクトルの位置にAt2の列ベクトルを置いて行列式を計算することに等しくなります。
 行列式の計算では、2つの列ベクトルが等しければ、その行列式は0になります。
そのため、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせるということを行なうと、t2の列ベクトルが2行ある行列の行列式を計算することに等しくなり、その計算結果は、
t2・Qt1=0
になります。

(余因子行列stが余因子の行列tsの行と列を入れ替えた理由)
 このように作られた列ベクトルで構成される行列tsを、行列の掛け算の計算規則の中で便利に使えるように、その行と列を入れ替えて定義したのが余因子行列stです。
行列の掛け算の計算規則では、ベクトルの内積は行ベクトルと列ベクトルの積であらわされるから列を行と入れ替えたのです。


【2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明】
2行2列の行列Ampの余因子行列Bstは、
11=A22
12=-A12
21=-A21
22=A11
でしたので、
mp+Bmp=(A11+A22)Emp
(要注意)この関係が成り立つのは2行2列の行列の場合だけに限ります。

両辺にAptを(右から)掛け算すると、
mppt+Bmppt=(A11+A22)Emppt
mppt+Δ・Emt=(A11+A22)Amt
 これは、2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理です。
この証明過程を覚えるとケイリー・ハミルトンの定理が覚え易くなると思います。


【ケイリー・ハミルトンの定理の(正規な)証明】
上記の証明は、偶然に証明ができたような証明であって、確実な礎がある解答ではなかった。そのため、以下では、問題の本質に正面から迫る方法でケイリー・ハミルトンの定理を証明する。

先ず、ケイリー・ハミルトンの定理は、行列式
Δ=det[Apt-xEpt]=0
の方程式のxを行列Aptに置き換え、係数項を単位行列Eptの係数倍に置き換えた式が成り立つという定理です。
この、「置き換え」がされる必然性が証明されなければ、ケイリー・ハミルトンの定理を証明したことにはならないと考える。

上の行列式の方程式は、
Δ=(A11-x) (A22-x)-A2112=0
ケイリー・ハミルトンの定理は、
(A11pt-Apt)(A22ts-Ats)-A2112ps=0・Eps
です。


これを証明するために、行列(Apt-xEpt)の余因子行列Bptを考える。この場合に、以下の式1が成り立つ。

 (Apt-xEpttsΔps   (式1)
この余因子行列Bptは、その要素である余因子が元の行列の要素の1次式により計算される。そのため、余因子行列は、変数xが高々1次である、xの多項式で展開した行列の和であらわせる。
すなわち、式2のようにxの1次の多項式で展開した行列の和であらわせる。
ts= xPts+Rts   (式2)
この余因子行列tsの式2を式1に代入する。
(Apt-xEpt)(xPts+Rts)=Δps  (式3)
ここで、Δは、
Δ=(A11-x)(A22-x)-A2112 
=x(A11+A22)x+(A1122-A2112) (式4)
この式4を式3に代入した下式がxの恒等式になる条件を求める。
(Apt-xEpt)(xPts+Rts)=(x-(A11+A22)x+(A1122-A2112))Eps
上式の左右の辺で、xの2乗の項と1乗の項と係数項とが、各々等しい条件を求める。
(xの2乗の項) -Ppsps  (式5)
(xの1乗の項) psptts=-(A11+A22ps (式6)
(係数項)  ptts(A1122-A2112ps  (式7)
A×{(A×式5)+式6}+式7を計算する。
すると、その式の左辺は0行列になり、
右辺は、行列式Δ
(1)xの2乗の項の係数にAの2乗を掛け算し、 
(2)xの1乗の項の係数にAを掛け算し、
(3)係数項は単位行列を掛けて、
それらの行列の項の和になります。
すなわち、
Δ=det[Apt-xEpt]=0
の方程式のxを行列Aptに置き換え、係数項を単位行列Eptの係数倍に置き換えた形の式になり、その式は、ptts-(A11+A22)Aps+(A1122-A2112)Eps=0ps
になります。
(証明おわり)

このケイリー・ハミルトンの定理は、回転行列Apt場合には以下の式になります。
 
【n行n列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明のページへリンク】





リンク:
南海先生による、n行n列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次

0 件のコメント:

コメントを投稿