大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式
行列Ampに対する余因子行列Bstを、以下の式で定義します。
(1)
2行2列の行列Ampの余因子行列Bstは、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
B1m=εmpAp2
B2p=εmpAm1
で計算します。
(補足)これらの式は、行列式εmpAm1Ap2の計算式から、余因子行列Bstに対応して、行列Aのs列目の項を除去した式です。
この計算に利用する行列
εmp
は、
ε12=1,
ε21=-1
であり、それ以外の
εmp=0
です。
余因子行列Bstは、具体的には、
B11=A22
B12=-A12
B21=-A21
B22=A11
こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
行列Ampの行列式=Δとすると、
B1mAm1=εmpAm1Ap2=Δ
B1mAm2=εmpAm2Ap2=0
B2pAp1=εmpAm1Ap1=0
B2pAp2=εmpAm1Ap2=Δ
∴
BstAtp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。
3行3列の行列Ampの余因子行列Bstは、
エディントンの行列式の計算記号εmpsを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
B1m=εmpsAp2As3
B2p=εmpsAm1As3
B3s=εmpsAm1Ap2
で計算します。
(補足)これらの式は、行列式εmpsAm1Ap2As3の計算式から、余因子行列Bstに対応して、行列Aのs列目の項を除去した式です。
この計算に利用する行列
εmpr
は、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=-1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。
こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
3行3列の行列Ampの行列式=Δとすると、
B1mAm1=εmpsAm1Ap2As3=Δ
B1mAm2=εmpsAm2Ap2As3=0
・・・
結局、
BsmAmp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。
(3)
このように、余因子行列Bsmは、
行列Ampの左から掛け算することで、Δ・Esp
となる行列です。
(4)
また、行列Ampの右から掛け算する場合も、同じことになります。
そうなるのは、行列式が以下の式でもあらわせることに由来します。
つまり、2行2列の行列式Δは、
Δ=εmpAm1Ap2
Δ=εmpA1mA2p
ともあらわせ、
また、3行3列の行列式Δは、
Δ=εmpsAm1Ap2As3
Δ=εmpsA1mA2pA3s
ともあらわせることに由来します。
(この証明は省略)
以下では、余因子行列Bsmの右側からの掛け算でも、この関係を満足することを確認するために、2行2列の行列を例に、直接計算してみます。
B11=A22
B12=-A12
B21=-A21
B22=A11
この余因子行列Btmの左から行列Astを掛け算すると、
A1tBt1=A11B11+A12B21=A11A22-A12A21=Δ
A1tBt2=A11B12+A12B22=-A11A12+A12A11=0
A2tBt1=A21B11+A22B21=A21A11-A22A21=0
A2tBt2=A21B12+A22B22=-A21A12+A22A11=Δ
∴
AstBtm=Δ・Esm
このように、余因子行列Btmは、
行列Astの右から掛け算しても左から掛け算しても、Δ・Esm
となる行列です。
(5)
ベクトルBt1に対して、
(ベクトルBt1は、(B11, B21)です。)
AstBt1=Δ・Es1
そのため、行列Astの行列式Δ=0の場合、
行列Astは、ベクトルBt1を0ベクトルに変換します。
このベクトルはこの行列の固有値0に対する固有ベクトルです。
また、ベクトルBt2に対しても、
AstBt2=Δ・Es2
そのため、行列Astの行列式Δ=0の場合、
行列Astは、ベクトルBt2も0ベクトルに変換します。
2行2列の行列Astの行列式Δ=0の場合、
ベクトルBt1とベクトルBt2は、同じ方向を向いた平行なベクトルです(証明は省略)。そのため、そのうち一方だけで(ただし、それが0ベクトルで無いベクトルを選ぶこと)、0ベクトルに変換されるベクトルの代表にすることができます。
このように、行列Astの行列式Δ=0の場合、
その余因子行列の列ベクトルBt1(又はBt2)は、行列Astが0ベクトルに変換します。
しかし、行列Aが、
1,1,1
0,0,0
0,0,0
のような行列の場合、
その余因子行列Bは、全ての成分が0である0行列になる。
その行列Aは、縦ベクトル(1,-1,0)や縦ベクトル(1,0,ー1)を0ベクトルに変換する。
しかし、その縦ベクトルを余因子行列Bの各列ベクトル(0ベクトル)の合成によって作ることができない。そのように、行列Aによって0ベクトルに変換される縦ベクトルのうち、余因子行列Bの縦ベクトルから作れないベクトルもあるので注意すること。
リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
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