大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式
【解説】
行列AwuBukと行列BwuAukとは等しくない場合が多いですが、
行列Aの行列式が0では無い場合は、
A-1km(AmuBus)=Bks=(BkmAmu)A-1us
が成り立ちます。
このようにある行列CとDが、
行列式が0では無い行列Pを介して、
PC=DP
という関係がある場合は、
行列CとDとは同じ固有値を持ち、行列Pによって互いに変換されます。
PCP-1=D
P-1DP=C
そのため、 行列AwuBukと行列BwuAukとは同じ固有値を持ち、行列A-1kmによって互いに変換されます。
また 、行列AwuBukと行列BwuAukは同じ固有値を持つので、固有値の和をあらわす行列の対角成分の和も同じになります。
つまり、
tr(AB)=tr(BA)
です。
この関係は、アインシュタインの縮約記法であらわすと簡単に証明できます。
tr(AB)=AmuBum=BumAmu=tr(BA)
です。
更に、行列AやBの行列式が0になる場合でも、
以下のようにして、
行列AB≡Fと、BA≡Gの固有値が等しいといえます。
行列Fの固有値λを求める式は、
det(F-λE)=0
(F11-λ) (F22-λ)-F21F12=0
λ2-tr(F)λ+det(F)=0
ここで、
tr(F)=tr(AB)=tr(BA)=tr(G)
det(F)=det(AB)=det(A)det(B)=det(BA)=det(G)
λ2-tr(G)λ+det(G)=0
だから、行列FとGは、固有値を求める式が同じになるから固有値が同じです。
この関係があるため、
交換子(AB-BA)≡Cの対角成分の和は0になります。
tr(AB-BA)=tr(AB)-tr(BA)=0
tr(C)=0
このため、2行2列の行列の交換子(AB-BA)≡Cの場合は、
2行2列の行列のケイリー・ハミルトンの定理によって、
CwuCuk+det(C)Ewk=tr(C)Cwk
の関係に、 tr(C)=0を代入すると、
CwuCuk+det(C)Ewk=Owk
CwuCuk=-det(C)Ewk
すなわち、 行列の交換子(AB-BA)≡Cを2乗した行列は単位行列に比例し、詳しくは-det(C)倍になります。
【問題】
2行2列の行列AとBが
AB-BA=A
をみたすとき、
AwuAuk=Owk
が成立することを示せ。
「入試数学伝説の良門100」
の問題96の、308ページ「別解」
(解答はじめ)
tr(A)=tr(AB-BA)=tr(AB)-tr(BA)=0 (1)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理によって、
AwuAuk+det(A)Ewk=tr(A)Awk
(1)を代入する。
AwuAuk=-det(A)Ewk (2)
A(AB-BA)=A(A)
(AB-BA)A=(A)A
(A2B-ABA)+(ABA-BA2)=2A2
A2B-BA2=2A2
(2)を代入する。
-det(A)B+det(A)B=2A2
-det(A)(B-B)=2A2
Owk=2AwuAuk
∴ AwuAuk=Owk
(解答おわり)
(別解:地道に計算する方法)
行列の要素を添え字を付けてあらわすと、式がスラスラかける。
(解答はじめ)
(AB-BA)wk=Awk
AwuBuk-BwuAuk=Awk
A11=A11B11+A12B21-B11A11-B12A21
A11=A12B21-B12A21 (1)
A22=A21B12+A22B22-B21A12-B22A22
A22=A21B12-B21A12 (2)
A12=A11B12+A12B22-B11A12-B12A22 (3)
A21=A21B11+A22B21-B21A11-B22A21 (4)
(1)と(2)より、
A11=A12B21-B12A21=-A22 (5)
(5)を(3)に代入してA22を消去する。
A12=A11B12+A12B22-B11A12+B12A11 (6)
A12(1-B22+B11)=2A11B12 (7)
(5)を(4)に代入してA22を消去する。
A21=A21B11-A11B21-B21A11-B22A21 (8)
A21(1-B11+B22)=-2A11B21 (9)
(7)×A21+(9)×A12
2A21A12=2A11(A21B12-A12B21) (10)
(10)に(5)を代入する
2A21A12=-2A11A11
A21A12=-A11A11 (11)
次に、AwuAukの要素を順次に計算する。
A1uAu1=A11A11+A12A21
(11)を代入して
A1uAu1=0 (12)
A2uAu2=A21A12+A22A22
(11)と(5)を代入して
A2uAu2=0 (13)
A1uAu2=A11A12+A12A22=A12(A11+A22)
(5)を代入して
A1uAu2=0 (14)
A2uAu1=A21A11+A22A21=A21(A11+A22)
(5)を代入して
A2uAu1=0 (15)
∴ (12)(13)(14)(15)から
AwuAuk=0wk
(解答おわり)
リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次
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