2012年2月5日日曜日

行列の固有値が重根の場合の固有ベクトル




大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式


【解説】
2行2列の行列の場合は、固有値λは、以下の行列式を0にするλを計算することで求められます。
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、固有ベクトルがあります。

すなわち、行列は、固有値毎のあるベクトル(固有ベクトル)を固有値倍にします。


一方λの解が重根である場合、すなわち、α=βの場合は、単位行列に比例する行列でなければ、
固有値αに対応する固有ベクトルは1つしか無い。

(注意)単位行列に比例する行列や0行列の場合は、例外的に、全方向のベクトルが固有ベクトルであり、複数の固有ベクトルを持つことに注意。


考え易くするために、λ=α=β=0となる行列Aspを考える。
そのような場合の行列Aspの例は、
11=1
12=1
21=-1
22=-1

εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2
=(A11-λ)(A22-λ)-A1221
=(1-λ)(-1-λ)+1=λ=0

この行列の余因子行列Cptは、
11=-1
12=-1
21=1
22=1
よって、この行列Aspは、余因子行列の列ベクトル(C11, C21)=(-1,1)をλ=0倍の0ベクトルに変換する。この列ベクトル(-1,1)が固有ベクトルである。


一方、行列Aspは、ベクトル(a,b)を、
(a+b, -a-b)=(-a-b)(-1,1)に変換する。
すなわち、固有値0に対する固有ベクトルに平行な、固有ベクトルの(-a-b)倍の、ベクトルに変換する。
すなわち、列ベクトル(a,b)に対して、列ベクトル(-1,1)に垂直な列ベクトル(-1,-1)との内積(-a-b)を計算して、その値を列ベクトル(-1,1)に掛け算した列ベクトルを求める、という変換を行なうのです。

行列Aspが任意のベクトル(a,b)を固有ベクトルに平行なベクトルに変換した後で再度行列Aspで変換すれば、それは0ベクトルになる。


同様に、λ=α=β=0となる2行2列の行列Aspは、どの行列も、
その行列で任意のベクトルを変換すれば、固有値が0の固有ベクトルに平行なベクトルに変換し、
2重に変換すれば、任意のベクトルを0ベクトルに変換する。
任意のベクトルを0ベクトルに変換する元の行列は0行列である。すなわち、
sppt=0st
である。


【第1の証明】
このことの証明を簡単に行なうには、ケイリー・ハミルトンの定理を先に証明しておいて、ケイリー・ハミルトンの定理を使って、これを証明するのが良いように考える。

(証明開始)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理は、固有値αとβに関して、
(Asp-αEsp)(Apt-βEpt)=0st
である。
このα=β=0の場合は、
sppt=0st
になる。
また、Aspの余因子行列Cmtの列ベクトルをCとすると、それは、固有値α=β=0の固有ベクトルであるから、
sp=0
また、任意のベクトルDに関して、
sppt=0

ptは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCに平行なベクトルである。
(証明おわり)

【第2の証明】
(証明開始)
重根の場合、すなわち、α=β=0となる場合に、
1つの固有ベクトル
(C11, C21)=(-1,1)≡C 
が得られ、その固有ベクトルに対して、
(Amp-α・Emp)C=0  (式1)
になる。
次に、行列(Amp-α・Emp)による任意のベクトルDの変換結果のベクトルは、以下の式2であらわせる。すなわち、 
(1)ベクトルベクトルCと線形独立な場合は、ベクトル固有ベクトルCを用いて、 
(Amp-α・Emp)D=g+hC  (式2)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルDがベクトルCと線形独立で無くベクトルCの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式2であらわせる。

(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、

式1により、
(Amp-α・Emp(h/g)C  (式3) 
が得られる。
この式3を式2に足し合わせると、
(Amp-α・Emp)(D(h/g)C)=g+hC ,
mp(D(h/g)C)=(α+g)・(D(h/g)C) (式4)
式4は、ベクトル(D(h/g)C)が行列mpにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とした最初の仮定が不適である。
∴ g=0

任意のベクトルFに関する式2は、
(Amp-α・Emp)DhC

(Amp-α・Empは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCに平行なベクトルである。
(証明おわり)




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