大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式
【解説】
2行2列の行列の場合は、固有値λは、以下の行列式を0にするλを計算することで求められます。
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、固有ベクトルがあります。
すなわち、行列は、固有値毎のあるベクトル(固有ベクトル)を固有値倍にします。
一方λの解が重根である場合、すなわち、α=βの場合は、単位行列に比例する行列でなければ、
固有値αに対応する固有ベクトルは1つしか無い。
(固有ベクトルが2つ無ければ、その行列は対角化できない異常な行列です。その行列は、対角化できないが、ここをクリックした先のサイトのように三角化はできる。)
(注意)単位行列に比例する行列や0行列の場合は、例外的に、全方向のベクトルが固有ベクトルであり、固有値の重複した数と同じ2つの固有ベクトルを持つことに注意。
3行3列の行列において、固有値が重複し、かつ、その重複した数と同じ数の固有ベクトルを持つ行列の例は、ここをクリック先のページの行列Bを参照。
《第1の例》
考え易くするために、λ=α=β=0となる行列Aspを考える。
そのような場合の行列Aspの例を下図に示す。
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)
=(A11-λ)(A22-λ)-A12A21
=(1-λ)(-1-λ)+1=λ2=0
この行列の余因子行列Cptは、上図のように求められる。
よって、この行列Aspは、余因子行列の列ベクトル
をλ=0倍の0ベクトルに変換する。この列ベクトル
が固有ベクトルである。
一方、行列Aspは、ベクトル
を、
に変換する。
すなわち、固有値0に対する固有ベクトルに平行な、固有ベクトルの(-a-b)倍の、ベクトルに変換する。
すなわち、列ベクトル(a,b)に対して、列ベクトル(-1,1)に垂直な列ベクトル(-1,-1)との内積(-a-b)を計算して、その値を列ベクトル(-1,1)に掛け算した列ベクトルを求める、という変換を行なうのです。
行列Aspが任意の列ベクトル
を固有ベクトルに平行なベクトルに変換した後で再度行列Aspで変換すれば、それは0ベクトルになる。
同様に、λ=α=β=0となる2行2列の行列Aspは、どの行列も、
その行列で任意のベクトルを変換すれば、固有値が0の固有ベクトルに平行なベクトルに変換し、
2重に変換すれば、任意のベクトルを0ベクトルに変換する。
任意のベクトルを0ベクトルに変換する元の行列は0行列である。すなわち、
AspApt=0st
である。
【第1の証明】
このことの証明を簡単に行なうには、ケイリー・ハミルトンの定理を先に証明しておいて、ケイリー・ハミルトンの定理を使って、これを証明するのが良いように考える。
(証明開始)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理は、固有値αとβに関して、
(Asp-αEsp)(Apt-βEpt)=0st
である。
このα=β=0の場合は、
AspApt=0st
になる。
また、Aspの余因子行列Cmtの列ベクトルをCtとすると、それは、固有値α=β=0の固有ベクトルであるから、
AspCp=0s
また、任意のベクトルDtに関して、
AspAptDt=0s
∴
AptDtは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCpに平行なベクトルである。
(証明おわり)
【第2の証明】
(証明開始)
重根の場合、すなわち、α=β=0となる場合に、
1つの固有ベクトル
(C11, C21)=(-1,1)≡Cp
が得られ、その固有ベクトルに対して、
(Amp-α・Emp)Cp=0m (式1)
になる。
次に、行列(Amp-α・Emp)による任意のベクトルDpの変換結果のベクトルは、以下の式2であらわせる。すなわち、
(1)ベクトルDmがベクトルCmと線形独立な場合は、ベクトルDmと固有ベクトルCmを用いて、
(Amp-α・Emp)Dp=gDm+hCm (式2)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルDmがベクトルCmと線形独立で無くベクトルCmの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式2であらわせる。
(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、
式1により、
(Amp-α・Emp)(h/g)Cp=0m (式3)
が得られる。
この式3を式2に足し合わせると、
(Amp-α・Emp)(Dp+(h/g)Cp)=gDm+hCm ,
Amp(Dp+(h/g)Cp)=(α+g)・(Dm+(h/g)Cm) (式4)
式4は、ベクトル(Dp+(h/g)Cp)が行列Ampにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とした最初の仮定が不適である。
∴ g=0
任意のベクトルFに関する式2は、
(Amp-α・Emp)Dp=hCm
∴
(Amp-α・Emp)Dtは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCpに平行なベクトルである。
(証明おわり)
《第2の例》
固有値が1の重根を持つ行列A:
は、固有ベクトル
を1つのみ持つ。
その固有ベクトルと同じ固有ベクトルを持つ行列B:
は、行列Aとの積が交換可能(可換)な関係があり、以下の式が成り立つ。
固有ベクトルを共有する行列同士の積が交換可能であるという関係は一般的に成り立つ。
リンク:
固有ベクトルが同じ行列
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次
(1)ベクトルDmがベクトルCmと線形独立な場合は、ベクトルDmと固有ベクトルCmを用いて、
(Amp-α・Emp)Dp=gDm+hCm (式2)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルDmがベクトルCmと線形独立で無くベクトルCmの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式2であらわせる。
(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、
式1により、
(Amp-α・Emp)(h/g)Cp=0m (式3)
が得られる。
この式3を式2に足し合わせると、
(Amp-α・Emp)(Dp+(h/g)Cp)=gDm+hCm ,
Amp(Dp+(h/g)Cp)=(α+g)・(Dm+(h/g)Cm) (式4)
式4は、ベクトル(Dp+(h/g)Cp)が行列Ampにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とした最初の仮定が不適である。
∴ g=0
任意のベクトルFに関する式2は、
(Amp-α・Emp)Dp=hCm
∴
(Amp-α・Emp)Dtは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCpに平行なベクトルである。
(証明おわり)
《第2の例》
固有値が1の重根を持つ行列A:
は、固有ベクトル
を1つのみ持つ。
その固有ベクトルと同じ固有ベクトルを持つ行列B:
は、行列Aとの積が交換可能(可換)な関係があり、以下の式が成り立つ。
固有ベクトルを共有する行列同士の積が交換可能であるという関係は一般的に成り立つ。
リンク:
固有ベクトルが同じ行列
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