大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式
【解説】
座標値(x,y)であらわされるベクトルを、左回りに角度θ回転させて、座標値(x’,y’)であらわされるベクトルにする変換をあらわすと以下の式になります。
x’=(cosθ)x-(sinθ)y
y’=(sinθ)x+(cosθ)y
この変換は、以下のように行列Aspであらわされています。
X’s=AspXp
ただし、この表記方法はアインシュタインの行列の積の表記方法です。通常の行列表現は以下のものです。
そして、ベクトル及び行列の各要素は以下の通りです。
x’1=x’
x’2=y’
x1=x
x2=y
A11=cosθ
A12=-sinθ
A21=sinθ
A22=cosθ
この行列Aspは回転変換をあらわしますが、この行列は、あるベクトル(固有ベクトル)をλ倍にする変換でもある。
λは、以下の行列式を0にするλ(それを固有値と呼ぶ)を計算することで求められます。
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、
(1)λの解α(=固有値)については、
行列(Asp-αEsp)の余因子行列Cptを計算し、その余因子行列Cptの列だけを取り出した列ベクトルCp1(又はCp2)が、
(Asp-αEsp)Cp1=0s
(0sは0ベクトル)
AspCp1=α・EspCp1=α・Cs1
を満足する。Cp1がα倍になる。
Cp1が固有ベクトルである。
Cp2もα倍になる固有ベクトルであるが、Cp1に平行なベクトルであるので、Cp1を求めるのもCp2を求めるのも同じことである。
(2)λの解β(=固有値)については、
行列(Asp-βEsp)の余因子行列C’ptを計算し、その余因子行列C’ptの列だけを取り出した列ベクトルC’p1(又はC’p2)が、
AspC’p1=β・C’s1
を満足する。
C’p1(又はC’p2)が固有ベクトルである。
(3)固有値を具体的に求める
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)=0
(cosθ-λ)(cosθ-λ)+(sinθ)(sinθ)=0
λ2-2(cosθ)λ+1=0
(λ-cosθ)2=-sin2θ
(λ-cosθ)=±i・sinθ
λ=cosθ±i・sinθ
α=cosθ+i・sinθ
β=cosθ-i・sinθ
(4)この固有値αに対する行列(Asp-αEsp)の余因子行列Cptを計算する。
A11-αE11=-i・sinθ
A12-αE12=-sinθ
A21-αE21=sinθ
A22-αE22=-i・sinθ
余因子行列Cptは、
C11=-i・sinθ
C12=sinθ
C21=-sinθ
C22=-i・sinθ
よって、固有ベクトルは、
(-i・sinθ, -sinθ)
sinθ≠0のとき、
-sinθで割り算して、もっと簡単にした固有ベクトルは、
(i, 1)
(注意)sinθ=0の場合、この割り算計算は(0で割り算するので)無効です。sinθ=0の場合、すなわち、回転角度が0の場合の行列Aspの固有ベクトルが(i, 1)であるかかどうかが定まりません。実際、回転角度が0の場合の行列Aspは単位行列Espになりますが、その固有ベクトルは、あらゆる方向のベクトル全てが固有ベクトルになります。(注意おわり)
この固有ベクトルに左から行列Aspを掛け算すると、
(i・cosθ-sinθ, i・sinθ+cosθ)
=(i・sinθ+cosθ)(i, 1)=α(i, 1)
行列Aspは、実数のベクトルだけを考えると回転変換しかしないのに、複素数で考えると、固有ベクトルを固有値倍に変換する。
(5)固有値βに対する行列(Asp-βEsp)の余因子行列Cptを計算する。
A11-βE11=i・sinθ
A12-βE12=-sinθ
A21-βE21=sinθ
A22-βE22=i・sinθ
余因子行列Cptは、
C11=i・sinθ
C12=sinθ
C21=-sinθ
C22=i・sinθ
よって、固有ベクトルは、
(i・sinθ, -sinθ)
sinθ≠0のとき、
sinθで割り算して、もっと簡単にした固有ベクトルは、
(i, -1)
この固有ベクトルに左から行列Aspを掛け算すると、
(i・cosθ+sinθ, i・sinθ-cosθ)
=(-i・sinθ+cosθ)(i, -1)=β(i, -1)
このように、固有ベクトルを固有値倍に変換する。
リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次
0 件のコメント:
コメントを投稿