2012年2月11日土曜日

追加講 三角形の面積と行列式

 

佐藤の数学教科書「図形と方程式」編の勉強

上図のように頂点の1つが原点Oにあり、他の2頂点が、A(a1,a2)とB(b1,b2)である三角形OABの面積を求めると以下の式になる。

△OAB=四角形OMPN-{△OMA+△OBN+△APB}
三角形の頂点Oを任意の座標位置にある頂点C(c1,c2)であるものとして、上の面積をあらわす公式を、3頂点A,B、Cの座標であらわすと、下の式になる。
この公式は、「クロス積」の形をしています。
「クロス積」は、正式な名前では、「行列式」と呼ばれています。
行列式は、その名前だけを高校3年の数学Cで学びます。
しかし、行列式が持つ以下の性質は、高校数学では教えないことになっているようです。

クロス積(行列式)は、Bの行にAの行の任意数(k)倍を足し算しても、値が変わらない。列も同様です。
(なお、クロス積は、行と列を入れ替えても値が変わりません)


例えば、下のようにBの行にAの行の(-1)倍を加えても、行列式の値は変わりません。 
このクロス積(行列式)は、下の形になります。
(式2)
さらに、一番上の行のみ(-1)を掛け算すれば、値が(-1)倍になります。その行列式全体に(-1)を掛け算したものは最初の行列式と値が同じ以下の形になります。
この行列式は、下図のように、点Aを中心として計算したクロス積(行列式)です。
このように、クロス積(行列式)は、値が同じ他の形のクロス積に容易に変換できるので、
クロス積(行列式)の形になった数式は「きれいな数式」です。
クロス積(行列式)の形の数式は、最も単純な形であらわせた数式と考えて良いです。

上の2つ前の(式2)の行列式に対して、一番上の行に、下の行を加えても、行列式の値は変わらず、以下の式になります。

結局、上の三角形の面積の公式のクロス積(行列式)の部分は、
(1)点Cを中心として計算したクロス積(行列式)
と、
(2)点Aを中心として計算したクロス積(行列式)
と、
(補足)この行列式全体に掛っている(-1)を無くすには、上の行と下の行を入れ替えて(-1)を取り除いた以下の行列式に置き換えてください。
行列式では2つの行を入れ替えれば符号が逆になるからです。(列の入れ替えでも同様)

(3)点Bを中心として計算したクロス式(行列式)
との、
値が同じ3種類のクロス積(行列式)であらわせますが、
そのどれもが、最も単純な式と考えてください。

そのクロス積(行列式)を展開した別の式を求めても、その式は単純では無い式になり、単純な形のクロス積(行列式)の形の表示から退化した形の式に変わってしまいます。

複素数平面を使うと「3つの複素数の交代式の簡単化公式」、このクロス積を展開してもさほど複雑では無い対称式でクロス積の内容をあらわすことができます。




リンク:
三角形の面積をベクトルで分解して計算する
高校数学の目次

2012年2月8日水曜日

行列の掛け算の定理

 
 
大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】
行列の掛け算はどういう演算に応用でき、どういう演算には応用できないかは、行列の掛け算の定理により定められます。
以下で、この行列の掛け算の定理を証明します。

 
(条件1)ベクトルDが、以下の式1と式2によりベクトルFに変換されること。その式の係数が行列Aを成すこと。

式1と式2の演算の係数を添え字を付けて区別して式3で表します。
この式3は、式3’とあらわすと便利です。
この表し方はアインシュタインが提案した表記方法です(アインシャタインの縮約記法)。
この式3’は、変数で表した添え字の変数名が同じ場合に、その変数名の添え字のあらゆる場合(この場合は1と2のみ)について和をとることにした式です。

(条件2)ベクトルFが、以下の式4と式5によりベクトルGに変換されること。その式の係数が行列Bを成すこと。

式4と式5の演算の係数を添え字を付けて式6で表します。
この式6は、アインシュタインの縮約記法の式6’であらわせます。

式6’に式3’を代入すると式7が得られます。
式7は、更に式8に変形できます(式8はアインシュタインの縮約記法であらわした式です)。
式8’のように、演算Aと演算Bを合成した演算Cを考えます。
式8から、演算Cをあらわす行列Cの要素の値を計算する式9が得られます。
こうして、演算AとBの行列の要素を用いた式9で演算Cをあらわす行列Cの要素が計算できることがわかりました。

この演算Cを、式10のように、演算Aと演算Bの積(掛け算)と定義します。
そして、その演算Aと演算Bの掛け算である演算Cの行列の要素は式9’で計算できます。
これが、行列の掛け算の定理です。

 すなわち、行列の掛け算の定理を、以下のようにあらわすことができます。
(条件1)ベクトルを式1~2でベクトルに変換する演算Aの行列Aが定義され、
(条件2)ベクトルを式4~5でベクトルに変換する演算Bの行列Bが定義されている場合に以下のことが成り立つ。
(結果)
 第1のベクトルを演算Aで変換して第2のベクトルを得、更に、第2のベクトルを演算Bで変換して第3のベクトルを得る場合、
その2つの演算は、第1のベクトルを第3のベクトルに変換する演算Cにまとめることができる。
演算Cの行列Cは、式9’で計算することで求めることができる。
その演算Cを、演算Aに演算Bを掛け算した演算であると定義する。
演算Cの行列の要素を計算する式9’の計算を、行列の掛け算と定義する。

【計算の形】
 なお、この掛け算の計算方式をベクトルAとBの内積にあてはめると、以下の形の行列の計算になる。

 この計算は、横ベクトルAと縦ベクトルBの積であらわせる。
 一方、アインシュタインの縮約記法では、ベクトルを縦ベクトルと横ベクトルの形に区別しないで内積の計算を表現できる。

 
 

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追加講:三角形の面積と行列式
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2012年2月7日火曜日

回転変換の行列の計算で三角関数の加法定理を得る

 

大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】

(X,Y)座標であらわされるベクトルを、左回りに角度θ回転させて、(X’,Y’)座標であらわされるベクトルにする変換は以下の式になります。

X’=(cosθ)X-(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y
この変換は次式のように行列であらわせます。

θ=α+β
の場合、
(1)角度αの回転変換の行列(回転行列)は、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(2)角度βの回転変換の行列(回転行列)も、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(3)そのため、以下の、行列の掛け算の定理が成り立つ。
すなわち、
(A)第1のベクトルに角度αの回転変換をして第2のベクトルを得、
(B)その第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、
(C)1つの行列であらわせる。
その行列は、
角度αの回転行列に角度βの回転行列を行列の掛け算計算で得た行列と等しい。

また、第1のベクトルに角度αの回転変換をして得た第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、θ=α+βの回転変換と同じである。

その回転行列を計算して比較すると、上式のように、三角関数の加法定理が得られます。

(補足)
なお、
(1)角度αの回転行列と角度βの回転行列を掛け合わせた計算計算結果に加法定理を適用すると角度(α+β)の回転行列になるので、
(2)角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になる
と説明されることがあるが、
その説明は本末転倒です。

角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になるのは自明のことであって、
(1)その自明な事実に、
(2)2つの演算を重ね合わせた演算の行列は行列の掛け算によって導出できる行列の掛け算の定理を適用することで、
(3)加法定理という関係式が導き出されます。

定理とその定理から導出できる結果とは、その関係を逆転させて、結果から大元の定理を導き出すこともできます。
そのため、どの事実が自明で主となる事実であり、どの事実が従属的に分かる関係であるかを的確に判断する数学的センスが大切です。

(蛇足)
ここで、2θの回転行列とその2分の1の回転行列の要素の間には以下の関係があることを覚えておくと便利です。



 

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追加講:三角形の面積と行列式
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2012年2月6日月曜日

座標の回転変換の式のおぼえかた


《目次》行列演算からベクトル解析まで

【解説】

(X,Y)の座標であらわすベクトルを、左回りに角度θ回転させて、(X’,Y’)の座標であらわすベクトルにする変換は以下の式になります。

X’=(cosθ)X-(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y

この変換の式のおぼえ方は、上の図を思い描いて、図から、

X座標成分のみがあるベクトルを回転させたベクトルのY’座標が(sinθ)・Xであること。
Y座標のみがあるベクトルを回転させたベクトルのX’座標が(-sinθ)・Yであること。

を想像する。
次に、それ以外は、係数がcosθの項を加えることで、回転変換の式ができあがります。

(補足)
三角関数の加法定理を知らないと回転行列が導き出せないという誤解が流通しているようですが、そのようなことはありません。
X座標成分のみがあるベクトルを回転させたベクトルのY’座標が(sinθ)・Xである。
X座標成分のみがあるベクトルを回転させたベクトルのX’座標が(cosθ)・Xである。

そのため、回転行列Aの要素は、
A11=(cosθ)
A21=(sinθ)
Y座標成分のみがあるベクトルを回転させたベクトルのX’座標が(-sinθ)・Yである。
Y座標成分のみがあるベクトルを回転させたベクトルのY’座標が(cosθ)・Yである。

そのため、回転行列Aの要素は、
A12=(-sinθ)
A22=(cosθ)
こうして、加法定理を使わずに、回転行列の全ての要素がわかります。


この回転行列が全てのベクトルを左回りに角度θ回転することの証明:
(1)全てのベクトルはX方向のベクトルとY方向のベクトルに分解されます。
(2)そして、その各々のベクトルが同じ角度θ回転します。
(3)そのため、その成分を合成したベクトルもまた角度θ回転します。 
(証明おわり)



リンク:
複素数平面での座標回転を応用した例
追加講:三角形の面積と行列式
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行列演算からベクトル解析まで目次

2012年2月5日日曜日

行列の固有値が重根の場合の固有ベクトル




大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】
2行2列の行列の場合は、固有値λは、以下の行列式を0にするλを計算することで求められます。
εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、固有ベクトルがあります。

すなわち、行列は、固有値毎のあるベクトル(固有ベクトル)を固有値倍にします。

一方λの解が重根である場合、すなわち、α=βの場合は、単位行列に比例する行列でなければ、
固有値αに対応する固有ベクトルは1つしか無い。
(固有ベクトルが2つ無ければ、その行列は対角化できない異常な行列です。その行列は、対角化できないが、ここをクリックした先のサイトのように三角化はできる。)

(注意)単位行列に比例する行列や0行列の場合は、例外的に、全方向のベクトルが固有ベクトルであり、固有値の重複した数と同じ2つの固有ベクトルを持つことに注意。
3行3列の行列において、固有値が重複し、かつ、その重複した数と同じ数の固有ベクトルを持つ行列の例は、ここをクリック先のページの行列Bを参照。


《第1の例》
考え易くするために、λ=α=β=0となる行列Aspを考える。
そのような場合の行列Aspの例を下図に示す。

εsp(As1-λEs1)(Ap2-λEp2)
=(A11-λ)(A22-λ)-A12A21
=(1-λ)(-1-λ)+1=λ2=0

この行列の余因子行列Cptは、上図のように求められる。
よって、この行列Aspは、余因子行列の列ベクトル

をλ=0倍の0ベクトルに変換する。この列ベクトル

が固有ベクトルである。


一方、行列Aspは、ベクトル

を、

に変換する。

すなわち、固有値0に対する固有ベクトルに平行な、固有ベクトルの(-a-b)倍の、ベクトルに変換する。
すなわち、列ベクトル(a,b)に対して、列ベクトル(-1,1)に垂直な列ベクトル(-1,-1)との内積(-a-b)を計算して、その値を列ベクトル(-1,1)に掛け算した列ベクトルを求める、という変換を行なうのです。

行列Aspが任意の列ベクトル

を固有ベクトルに平行なベクトルに変換した後で再度行列Aspで変換すれば、それは0ベクトルになる。


同様に、λ=α=β=0となる2行2列の行列Aspは、どの行列も、
その行列で任意のベクトルを変換すれば、固有値が0の固有ベクトルに平行なベクトルに変換し、
2重に変換すれば、任意のベクトルを0ベクトルに変換する。
任意のベクトルを0ベクトルに変換する元の行列は0行列である。すなわち、
AspApt=0st
である。

【第1の証明】
このことの証明を簡単に行なうには、ケイリー・ハミルトンの定理を先に証明しておいて、ケイリー・ハミルトンの定理を使って、これを証明するのが良いように考える。

(証明開始)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理は、固有値αとβに関して、
(Asp-αEsp)(Apt-βEpt)=0st
である。
このα=β=0の場合は、
AspApt=0st
になる。
また、Aspの余因子行列Cmtの列ベクトルをCtとすると、それは、固有値α=β=0の固有ベクトルであるから、
AspCp=0s
また、任意のベクトルDtに関して、
AspAptDt=0s
∴
AptDtは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCpに平行なベクトルである。
(証明おわり)

【第2の証明】
(証明開始)
重根の場合、すなわち、α=β=0となる場合に、
1つの固有ベクトル
(C11, C21)=(-1,1)≡Cp 
が得られ、その固有ベクトルに対して、
(Amp-α・Emp)Cp=0m  (式1)
になる。
次に、行列(Amp-α・Emp)による任意のベクトルDpの変換結果のベクトルは、以下の式2であらわせる。すなわち、 
(1)ベクトルDmがベクトルCmと線形独立な場合は、ベクトルDmと固有ベクトルCmを用いて、 
(Amp-α・Emp)Dp=gDm+hCm  (式2)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルDmがベクトルCmと線形独立で無くベクトルCmの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式2であらわせる。

(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、

式1により、
(Amp-α・Emp)(h/g)Cp=0m  (式3) 
が得られる。
この式3を式2に足し合わせると、
(Amp-α・Emp)(Dp+(h/g)Cp)=gDm+hCm ,
Amp(Dp+(h/g)Cp)=(α+g)・(Dm+(h/g)Cm) (式4)
式4は、ベクトル(Dp+(h/g)Cp)が行列Ampにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とした最初の仮定が不適である。
∴ g=0

任意のベクトルFに関する式2は、
(Amp-α・Emp)Dp=hCm
∴
(Amp-α・Emp)Dtは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCpに平行なベクトルである。
(証明おわり)

《第2の例》
固有値が1の重根を持つ行列A:

は、固有ベクトル

を1つのみ持つ。
その固有ベクトルと同じ固有ベクトルを持つ行列B:

は、行列Aとの積が交換可能(可換)な関係があり、以下の式が成り立つ。

固有ベクトルを共有する行列同士の積が交換可能であるという関係は一般的に成り立つ。




リンク:
固有ベクトルが同じ行列
追加講:三角形の面積と行列式
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