2012年2月8日水曜日

行列の掛け算の定理

 
 
大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】
行列の掛け算はどういう演算に応用でき、どういう演算には応用できないかは、行列の掛け算の定理により定められます。
以下で、この行列の掛け算の定理を証明します。

 
(条件1)ベクトルDが、以下の式1と式2によりベクトルFに変換されること。その式の係数が行列Aを成すこと。

式1と式2の演算の係数を添え字を付けて区別して式3で表します。
この式3は、式3’とあらわすと便利です。
この表し方はアインシュタインが提案した表記方法です(アインシャタインの縮約記法)。
この式3’は、変数で表した添え字の変数名が同じ場合に、その変数名の添え字のあらゆる場合(この場合は1と2のみ)について和をとることにした式です。

(条件2)ベクトルFが、以下の式4と式5によりベクトルGに変換されること。その式の係数が行列Bを成すこと。

式4と式5の演算の係数を添え字を付けて式6で表します。
この式6は、アインシュタインの縮約記法の式6’であらわせます。

式6’に式3’を代入すると式7が得られます。
式7は、更に式8に変形できます(式8はアインシュタインの縮約記法であらわした式です)。
式8’のように、演算Aと演算Bを合成した演算Cを考えます。
式8から、演算Cをあらわす行列Cの要素の値を計算する式9が得られます。
こうして、演算AとBの行列の要素を用いた式9で演算Cをあらわす行列Cの要素が計算できることがわかりました。

この演算Cを、式10のように、演算Aと演算Bの積(掛け算)と定義します。
そして、その演算Aと演算Bの掛け算である演算Cの行列の要素は式9’で計算できます。
これが、行列の掛け算の定理です。

 すなわち、行列の掛け算の定理を、以下のようにあらわすことができます。
(条件1)ベクトルを式1~2でベクトルに変換する演算Aの行列Aが定義され、
(条件2)ベクトルを式4~5でベクトルに変換する演算Bの行列Bが定義されている場合に以下のことが成り立つ。
(結果)
 第1のベクトルを演算Aで変換して第2のベクトルを得、更に、第2のベクトルを演算Bで変換して第3のベクトルを得る場合、
その2つの演算は、第1のベクトルを第3のベクトルに変換する演算Cにまとめることができる。
演算Cの行列Cは、式9’で計算することで求めることができる。
その演算Cを、演算Aに演算Bを掛け算した演算であると定義する。
演算Cの行列の要素を計算する式9’の計算を、行列の掛け算と定義する。

【計算の形】
 なお、この掛け算の計算方式をベクトルAとBの内積にあてはめると、以下の形の行列の計算になる。

 この計算は、横ベクトルAと縦ベクトルBの積であらわせる。
 一方、アインシュタインの縮約記法では、ベクトルを縦ベクトルと横ベクトルの形に区別しないで内積の計算を表現できる。

 
 

リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
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