2018年12月13日木曜日

ベクトルの外積の3重積の公式

《目次》行列演算からベクトル解析まで

【3重積の公式の証明(その1)】
「エディントンのイプシロン」(レビチビタ記号とも呼ばれる)を使って3次元ベクトルの外積を定義し、その3次元ベクトルの外積の3重積を計算することで、3重積の公式を楽に導出して思い出せるようになります。

3次元ベクトルAとベクトルBの外積でベクトルHを計算する式は、エディントンのイプシロンを使って:
εmpr=h
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
と表して覚えた方が覚えやすいです。

また、3次元ベクトルAとBの内積は、クロネッカーのデルタ
δst
を使って以下のように表すことができます。

ここで、以下の、3次元ベクトルAとBとCの外積の3重積を計算します。
この式の計算は、エディントンのイプシロンを使って、アインシュタインの縮約表記で以下のようにあらわすことができます。
この式で出て来た、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンは、以下の様に展開できます。
先ず、値が0にならない場合を先に列記します。

以上の式以外の添え字を持つテンソルγstijの値は全て0になります。
そのため、2重のエディントンのイプシロンを表すテンソルγstijは、クロネッカーのデルタδの積の差の以下の式と等価です。
この等価な公式を覚えましょう。
この公式を使うと、以下の様に計算を進めることができます。
(証明おわり)

この、3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は、
以上の、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンの、クロネッカーのデルタの積の差への変換公式を使って、速やかに導き出す様に覚えましょう。

【3重積の公式の証明(その2)】
(公式の検算)
 3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は以下の図を書いて検算できます。
(検算おわり)

(公式の証明開始)
(1)
上の検算の結果:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、
ベクトルBがY方向のベクトルである場合に、
ベクトルCがX方向のベクトルであってもY方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

ベクトルCがZ方向のベクトルの場合も、結果が0になるので、公式が成り立つ。

よって、
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがY方向のベクトルである場合は、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(2)
ベクトルAがY方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(3)
ベクトルAがZ方向のベクトルであり、ベクトルBがX方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(4)
以上の(1)から(3)の、ベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合にも公式が成り立つ。
すなわち、(3)の場合のベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(5)ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがX方向の場合も、結果が0になるので、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(6)
以上の(1)と(4)と(5)より、
ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(7)
以上の(6)と同様にして、
ベクトルAがY方向のベクトルの場合もZ方向の場合も、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(8)
以上の(6)と(7)により、
ベクトルAがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、
公式が成り立つ。

(証明(その2)おわり)

【3重積の公式の証明(その3)】
3重積の公式は以下の様に直交ベクトル系a,h,avを定義して計算して求めることもできます。



先ず、3重積の公式の左辺を計算します。

次に、3重積の公式の右辺を計算します。

式9と式10の値が一致するので、以下の式の3重積の公式が成り立つ。

(証明(その3)おわり)

【3重積の公式の証明(その4)】
その3の証明とほとんど同じ証明ですが、以下の形の計算を行って証明することができます。
(1)ベクトルAの方向の単位ベクトルをベクトルXとする。
(2)ベクトルAとベクトルBの張る平面上のベクトルで、ベクトルAに垂直な単位ベクトルをベクトルYとする。
(3)ベクトルXとベクトルYの外積をベクトルZとする。ベクトルZは単位ベクトルになる。
直交ベクトル系、X,Y,Zで、ベクトルA,B,C、が以下の図のように表せる。

このとき、以下の式1が成り立つ。

また、以下の式2が成り立つ。

式1のベクトルと式2のベクトルが等しいので式3の関係が成り立つ。

(証明(その4)おわり)

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