大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式
【解説】
上図のように、回転した楕円の位置座標(X,Y)を行列Aksにより(X’,Y’)に一次変換して楕円を円に変形する問題を考える。
点(X,Y)の描く楕円の式は以下のように変形できる。
この式を以下のように、
とする一次変換の行列Aksを求める問題です。
この式は以下のように変形できます。
このような関係を満足する行列Aksを求める問題に帰着します。
この解は1つではありませんが、以下で、1つの解を計算する方法を説明します。また、別解として、より簡単に得られる解の計算方法を示します。
ここで、楕円の式を与える行列Fmpの固有値をα1とα2とする。楕円の式をあらわすとき、これらの固有値は正値である。
固有値α1の固有ベクトルをPm1とし、
固有値α2の固有ベクトルをPm2とする。
ここで、一旦、アインシュタインの縮約表記を止める。
以下の式が成り立つ。
(以下の公式を思い出して)
このように定義した行列Ampも解の1つとなり得ることを以下で証明する。
固有値が正値であるので、その平方根も実数で得られる。
その平方根は、正値以外に、負の値にしてもかまわないが、以下の計算では、正値の平方根で計算を進める。
ここで、ケイリーハミルトンの定理を利用して、この行列Ampが対称行列であることを証明する。
(補足)なお、対称行列Fmpの固有ベクトルは互いに直交するべクトルになることが知られている。そして、その場合は、固有ベクトルの作る座標変換の行列Pmkは回転行列になるように整えることができる。その場合は、その回転行列で変換して作られる行列Ampは対称行列になる。(n行n列の行列で同様な問題を扱う場合は、そのようにして、行列Ampが対称行列になることを証明する)
行列Ampが定義できたので、
以下では、アインシュタインの縮約表記に戻って、計算を進める。
こうして、回転した楕円を、その楕円の位置座標(X,Y)を以上の計算で求めた行列Aksを使って(X’,Y’)に一次変換すれば、その楕円を円に変形することができることがわかった。
【別解】
とおくと、
ここで、元の式で、b>0でなければならない。
そして、
(c-(d2/b))>0であることが楕円の条件である。
(c-(d2/b))<0の場合は、双曲線の標準形に1次変換される。
(c-(d2/b))=0の場合は、2つの直線に1次変換される。
放物線に1次変換されるためには、元の式にXかYの1次の項がある必要がある。
A11=√b
A12=(d/√b)
A21=0
A22=√(c-(d2/b))
ここで得られた行列を使って検算すると、たしかに以下の式が成り立っている。
AtmAtp=Fmp
Atmの解のうち、この解が一番速く計算できる。
【総合解答】
上の別解を拡張して全てのAtmの解を計算する。
bX2+2dXY+cY2=1 (1)
以下の形のX、Yに関する恒等式を組み立てる。
bX2+2dXY+cY2=(fX+gY)2+(hX+kY)2 (2)
X’=fX+gY
Y’=hX+kY
上の恒等式2を組み立てると、最初の式1は以下の式3に書き換えることができる。
X’2+Y’2=1 (3)
以下では、先の式2が恒等式になるために必要なf,g,h,kの条件を求める。
f2+h2=b (4)
g2+k2=c (5)
2fg+2hk=2d (6)
必要な条件は以上の式4から6である。
式4から式6の連立方程式を解く。
f=(√b)cosα (7)
h=(√b)sinα (8)
g=(√c)sinβ (9)
k=(√c)cosβ (10)
上のように式7から10でf,g,h,kを定めると、式4と式5が成り立つ。
式6に式7から式10を代入し、2で割ると以下の式を得る。
(√(bc)){cosα・sinβ+sinα・cosβ}=d
sin(α+β)=d/(√(bc)) (11)
ここで、
α+β=θ (12)
とおいて、式11を書き換えると、
sin(θ)=d/(√(bc)) (13)
この式13により、θが定まる。
任意のαと、固定した値のθとで、f,g,h,k全てがあらわされる。
式12から、
β=θ-α
として、式9と10を書き換えると、
g=(√c)sin(θ-α) (14)
k=(√c)cos(θ-α) (15)
式13で定められるθと任意の値のパラメータαを用いて、式7,8、14、15で、変換の全てのパラメータf,g,h,kが定められる。
【対称行列となる解】
これで解答が得られたが、このうち、パラメータf、g、h、kで定まる変換行列が対称行列になる特別な場合を調べておく。
g=h=(√c)sin(θ-α)=(√b)sinα
sinα(-(√c)cosθ-(√b))+cosα((√c)sinθ)=0
1/tanα=((√c)cosθ+(√b))/((√c)sinθ)
cosθ≧0とする解は
1/tanα
=((√c)√(1-(d2/(bc)))+(√b))/((√c)(d/(√(bc))))
=(√(c-(d2/b))+(√b))/((d/(√b)))
=(√(bc-d2)+b)/d
1/sinα2=1+(1/tanα)2
={d2+(bc-d2)+b2+2b√(bc-d2)}/d2
={bc+b2+2b√(bc-d2)}/d2
=b{c+b+2√(bc-d2)}/d2
g2=h2=b・sin2α=d2/{c+b+2√(bc-d2)}
=d2/{c+b+2√(bc-d2)}
bc-d2=Δ とおくと、
g2=h2=d2/{c+b+2√(Δ)}
gとhがdと同じ符号を持つ解を求める。
g=h=d/√{c+b+2√(Δ)}
式1から、
f=h/tanα=(√(Δ)+b)/√{c+b+2√(Δ)}
式0から
fg+hk=d
(√(Δ)+b)d/{c+b+2√(Δ)}+dk/√{c+b+2√(Δ)}=d
(√(Δ)+b)/{c+b+2√(Δ)}+k/√{c+b+2√(Δ)}=1
(√(Δ)+b)/√{c+b+2√(Δ)}+k=√{c+b+2√(Δ)}
k={c+b+2√(Δ)-(√(Δ)+b)}/√{c+b+2√(Δ)}
={c+√(Δ)}/√{c+b+2√(Δ)}
以上で得た解を整理する。
ここで得たパラメータf,g=h,kから成る1次変換の対称行列Atmとパラメータb,c,dからなる対称行列Fmpとは、掛け算を計算してみると、演算順序を交換しても結果が変わりません。
これは、次のページで説明することですが、行列Atmと行列Fmpとは固有ベクトルを共有していることを意味します。
そのため、この行列Atmは、最初に考察した1つの解、その固有値が行列Fmpの固有値の平方根である対称行列の具体的な解になっています。
【対称行列となる変換行列Atmの簡単な計算方法】
パラメータf、g、h、kで定まる変換行列Atmが対称行列になる場合には、その行列の2乗が対称行列Fmpになることを利用して、もっと簡単に変換行列Atmを求めることができます。その計算方法を以下で説明します。
AtmAmk=Ftk (1)
この場合、行列Ftkの行列式
bc-d2=Δ
とおくと、
行列Atmの行列式=±√Δ
になります。このうち、行列式が√Δとなる解のみを求める。
行列Atmに関するケイリー・ハミルトンの定理は以下の式になります。
AtmAmk-(A11+A22)Atk+(√Δ)Etk=0tk (2)
式2に式1を代入すると、
Ftk-(A11+A22)Atk+(√Δ)Etk=0tk
(A11+A22)Atk=Ftk+(√Δ)Etk (3)
この行列の対角要素の和を計算する。
(A11+A22)2=F11+F22+2(√Δ)
(A11+A22)=√{F11+F22+2(√Δ)}=√{b+c+2(√Δ)}
これを式3に代入する。
リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次
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