2012年3月15日木曜日

固有ベクトルが同じ行列



大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式


【解説】
固有値はどうであれ、固有ベクトルが同じ2つの行列を考えます。
特に、n行n列の行列ならn個の共通する固有ベクトル
t1
t2
・・・
tn
が存在する”正常な”行列AstとBstを考えます。
それらのベクトルを固有ベクトルとする行列Astは、その固有ベクトルを並べた行列Ptkを用いて以下の式で計算することで、対角化した行列Cukに変換できます。
-1ussttk=Cuk   ←Asttk=Psuuk
同じそれらのベクトルを固有ベクトルとする行列Bstも同様に、行列Ptkを用いて以下の式で計算することで、対角化した行列Dukに変換できます。
-1ussttk=Duk
対角化された行列CとDでは、以下の関係が成り立ちます。
ukks=Dukks  (1)
なぜなら、u=k=sの場合以外では、式1の項が0になるからです。そして、以下の式のように、u=k=sとなるk番目の対角成分がkkkkになり、その積の値は行列CとDの積の順番には関係しないからです。
 式1により、対角行列の掛け算の順序が交換可能(可換)です。
この式1の左からPmuを掛け算して、右からはP-1stを掛け算します。 
muukks-1st=Pmuukks-1st
muup-1pwwkks-1st=Pmuup-1pwwkks-1st
mwwt=Bmwwt
∴ 行列Amwと行列Bwtの掛け算の順序が交換可能(可換)です。


逆に、n行n列の行列に関して、n個の固有ベクトルの数を完備する”正常な”行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合に、行列Amwの固有ベクトルn個が、そっくりそのまま、行列Bstの固有ベクトルでもあります。そのことを以下で証明します。
mwwt=Bmwwt  (2)
この行列Amwの固有ベクトルn個を並べた行列をPmuとします。
この式2の左からP-1umを掛け算して、右からはPtsを掛け算します。 
-1ummwwtts=P-1ummwwtts
-1ummppk-1kwwtts=P-1ummppk-1kwwtts
uk-1kwwtts=P-1ummppkks
ここで、Cukは対角行列であるから、
その対角された成分(固有値)を順番にαとすると、
α-1uwwtts=P-1ummppsα
α-1ummpps=P-1ummppsα
(α-α)P-1ummpps=0us (3)
ここで、行列Amwの全ての固有値αが異なる場合は、
式3の左辺の行列のu行s列のu≠sである成分を(α-α)で割り算した結果が式3の右辺の0行列の各成分の値0と等しくなります。
u≠sの場合、
-1ummpps=0us
すなわち、P-1ummppsは対角行列になります。
つまり、行列Bmpも、行列Amwの固有ベクトルの作る行列Ppsで対角化できます。
行列Bmpを対角化できる行列Ppsの各縦ベクトルは、行列Bmpの固有ベクトルです。
∴ (行列Amwの全ての固有値αが異なる場合は)
行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合には、行列Amwの固有ベクトルn個が、そっくりそのまま、行列Bstの固有ベクトルになります。
よって、行列が単位行列の定数倍以外であって、行列の固有値が重解(重根)を持たないときは、
(1)行列AとBの固有ベクトル(の方向)が同じならば、行列の積AB=BAになり、
(2)行列の積AB=BAならば、 行列AとBの固有ベクトル(の方向)が同じになります。

【対角行列】
対角行列の固有ベクトルは(1,0)と(0,1)で、この固有ベクトルをすべての対角行列が共有します。
そのため対角行列同士では行列の積が交換可能です。
対角行列との行列の積が交換可能な行列は対角行列です。

【回転行列】
また、回転行列の固有ベクトルは(i,1)と(i,-1)であって、この固有ベクトルはすべての回転行列が共有します。 
そのため、回転行列同士では行列の積が交換可能です。
回転行列との行列の積が交換可能な行列は回転行列です。

固有ベクトルを共有する行列は行列の積が交換可能であるという原理は、大学で量子力学を学ぶときなどに利用されます。

【単位行列E
mwとその他の行列との計算順の交換関係】
n行n列の単位行列のn個の固有値は全て1であって等しい。
この単位行列は、全ての行列と計算順序を交換できます。
単位行列の固有ベクトルは全ての方向のベクトルが固有ベクトルです。
そのため、単位行列と計算順序を交換する全ての行列毎に、その行列の固有ベクトルは単位行列の固有ベクトルでもあります。
そのことは、以下の様に言うこともできます。
(単位行列Emwの全ての固有値αが等しい場合)
単位行列Estと任意の行列Bstの掛け算の順序がいつでも交換可能(可換)である。その場合に、行列Bmwの固有ベクトルn個を、そっくりそのまま、単位行列Estの固有ベクトルにすることができます。

(結局、行列Amwの固有値が全て異なっていても、又、同じ値が重なっているという場合にも)
行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合には、行列Amwの固有ベクトルn個と、行列Bstのn個の固有ベクトルを同じベクトルに合わせることができます。


固有ベクトルが一致する関係が成り立つことが本質的に重要です。
2行2列の行列の場合に、行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合に、
st=βAst+γEst
となることが試験問題に出されていますが、それは、2行2列の行列で、固有ベクトルが同じ行列がそういう式であらわされるからです。
2行2列の行列でこの関係が成り立つ理由は、
2行2列の行列に限っては、あらゆる対角行列Dstは、固有値の異なる対角行列Cstを使って、
st=βCst+γEst
とあらわすことができることに由来します。
しかし、3行3列以上の行列では、
計算順序が交換可能(可換)な行列同士では、固有ベクトルが一致しますが、
st=βAst+γEstという関係は必ずしも成り立たない。それは、可換な行列同士に普遍的に成り立つ関係ではありません。

しかしながら、それにより、
「2行2列の行列に限っては、単位行列と足し合わせることで、計算順序が交換できる全ての行列を作ることができる」
という便利な関係があることがわかります。

【楕円をあらわす行列と固有ベクトルが同じ行列を作って楕円の固有ベクトル(軸ベクトル)を計算する】
この行列には、列ベクトル同士の内積が0になる、すなわち、列ベクトルが直交するという特別な性質があります。
そのため、この行列は以下のようにあらわすことができます。
 この行列Sは、以下のように、ベクトルを、傾き角θの直線に関して対称なベクトルに変換する行列です。
つまり、傾き角度θの直線の方向のベクトル成分はそのままにして、それに直交する方向のベクトル成分には-1を掛け算する変換をする行列です。
 傾き角度θの直線の方向のベクトルが第1の固有ベクトルであり、それに直交する方向のベクトルが第2の固有ベクトルです。
それらの固有ベクトルは、以下のように計算することができます。
こうして求めた固有ベクトルは、元の、楕円を与える行列Fの固有ベクトルでもあります。

 こうして、楕円の行列Fの固有ベクトル、すなわち、楕円の軸方向のベクトルが求められた。

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